タキイ種苗のラベンダー「羊蹄」はホント?
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ラベンダー豆知識
タキイ種苗といえばサカタのタネと並ぶ日本を代表する種苗メーカーで、その品質の高さには定評があります。
そのタキイさんの通販カタログ「花と野菜ガイド」に掲載のラベンダー・羊蹄(ようてい)が、その写真・記事内容とも、どうも違うのではないかということを今回は指摘しておきたいと思います。
この苗を購入された方が後に疑問に思って検索されたときに、このような見解もあるということを知っていただければ幸いです。
問題のラベンダーは「花と野菜ガイド」(書店で100円)のP10(特集)とP25に掲載されています。
このカタログはネット上でも確認することができます。
ラベンダーの品種に詳しい方にもぜひ見ていただきたいと思います。
まずP10のラベンダー紹介記事。
以下引用。
富良野のラベンダー畑に植えられている「オカムラサキ」と並び、北海道で有名な品種。本種は特に香りが強く、香料原料として栽培される隠れた名品。ドライフラワーにしても紫色が残り、ポプリにして楽しむことができる。<25頁に掲載>
次にP25のラベンダーの説明。
以下引用。
従来種に比べ、花色が濃く素晴らしい青紫色で香りも強いのが魅力。暑さに強く、30℃ほどでも耐える特徴がある。シソ科。
説明を読めばこの品種が早咲きの「濃紫3号」を指していることは明らかで、掲載されている写真もその色の濃さや花のつき具合から「濃紫3号」であると断言できます。
参考記事 ⇒ 富良野で栽培されている品種
濃紫3号・つぼみ(正確にはガク)の方が色が濃いのが特徴。
ようてい・色は薄く香りもそれほど強くはない。
ファーム富田・手前から濃紫3号・ようてい・はなもいわ(一番白い)・おかむらさき・一番奥にも濃紫3号。手前2品種の色の違いを確認ください。
実は、直接タキイさんに問い合わせをさせていただきました。
その回答は「生産者が『ヨウテイ』だと言っているので間違いありません」とのことでした。ヨウテイをもとに色の濃いものを選抜したらこうなったという生産者の説明だったそうです。
基本的なことですが、ラベンダーは挿し木で増やします。ヨウテイを何万本挿し木しても、その形質は100%ヨウテイです。挿し木とはそういうものです。
タネで増やすと様々な形質が現れてしまい、その品種の固有性が疑われます。ヨウテイからタネを採ったからといって、その出てきた苗にすべてヨウテイと名づけてしまったら、もたらすのは混乱だけでしょう。
私自身もいろいろ調べているのですが、濃紫3号の来歴は実のところはっきりしません。ファーム富田会長・富田氏はその著書の中で
濃紫3号はヨウテイの異形株らしい
という表現をしています。
具体的な生産地は企業秘密のようで明かしてもらえませんでしたが、気候の関係上北海道ではないでしょう。この「ヨウテイ」生産者が「濃紫3号」を入手して殖やすなかで、富田氏の言葉などを自分なりに解釈してその「濃紫3号」を「ヨウテイ」と取り違えてしまっているのではないか、と私は見ています。
タキイさんのようなブランド力のあるメーカーが「濃紫3号」を「ヨウテイ」だと断言しているのですから事態はかなり深刻です。これはタキイさんだけではなくて、北海道を代表するホームセンター・ホーマックでも「ヨウテイ」の名のついた「濃紫3号(と思われる苗)」が昨年売られているのを見かけました。この生産者はかなり資本力があり、何万鉢というラベンダー「ヨウテイ」を全国に卸しているのでしょう。
この辺の事情に詳しい方、メールお待ちしております。
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