上富良野町日の出公園の発祥の地碑
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各地の発祥の地
前回は富良野地方のラベンダー発祥の地が、上富良野町東中(ひがしなか)地区であり、発祥の地の碑が建っていることを書きました。このことは観光客にはもちろん富良野市民や中富良野・上富良野町民にもほとんど知られておらず、実際わざわざこの碑を見に来る人は皆無です。
一方同じ町内の日の出公園に「発祥の地」のモニュメントが存在することは、一度訪れたことがある方はご存知でしょう。
この碑を見てファーム富田が発祥の地ではなく、日の出公園が発祥の地であると思い込んでいる方も多いことでしょう。
ではなぜ町内に2つの発祥の地があり、その一つが日の出公園に建っているのでしょうか。
日の出公園の「日の出」は、別に展望台からの日の出が美しいからではなく、東中地区と同じように「日の出地区」という地域名に由来しています。町市街地に近い小高い丘は日の出山と呼ばれ、昭和42(1967)年にスキー場、昭和52(1977)年には公園として整備されています。
この日の出公園にラベンダーが植栽されたのが昭和55(1980)年で、このときより日の出公園は観光ラベンダー園として歩み始めました。
つまり日の出公園自体はまったく発祥の地ではありません。観光客の受け入れのために造成された「観光ラベンダー園」です。
従って本来であればこの地に発祥の地碑があること自体おかしいのですが、観光客に対するアピールとして、中富良野町のファーム富田に対抗する形で上富良野町のラベンダーの存在意義を高める上で、この地に記念碑が必要と判断したのでしょう。
モニュメントの裏側には東中にある石碑同様に碑文が書かれています。
設置年月日は確認できていませんが、東中にある石碑と同じ平成6年に設置されていて、やはり裏側に「上富良野町のラベンダーの由来」と題した説明書きがあります。読み比べるとわかりますが、東中の碑文に肉付けし丁寧な言葉づかいにしただけで内容的には一緒です。以下全文。
ラベンダーは、フランス原産のシソ科の多年生小潅木で、古くから地中海沿岸で香料作物として栽培されてきました。
日本でのラベンダー栽培は、昭和12年に曽田香料株式会社がフランスから種子を入手し、全国の農業試験所に委嘱して試験栽培を行った結果、北海道が気候的に生育に一番適していることが確認され、昭和15年から札幌郊外と岩内郡の二か所に農場を確保し、本格的な作付けが始まりました。上富良野町にラベンダーが作付けされたのは昭和23年で、町内の東中在住のU、O、I氏【注】等が曽田香料札幌工場に働きかけ委託栽培契約を結び、富良野地方で初めてラベンダーの根が下ろされました。
昭和26年には、町内の東中にボイラー式蒸留工場が設けられ、作付面積の拡大に伴い、島津、江花、旭野、日の出、里仁地区にも蒸留施設が設置され、最盛期には85ヘクタール、と全国の85%が生産されました。
昭和45年には、全道で275haの作付け面積を記録した後、輸入品の増加と天然香料需用の頭打ち、農業構造の変化により減反の一途をたどり、上富良野町でも昭和52年に香料原料としての買い付けが中止されました。
しかし、丘一面を紫に染めるラベンダーを愛する人々が、栽培を継続していたことが踏み台となり、昭和50年以降からラベンダーの観光の面での知名度と価値観が高まり始め、新たな観光作物への道が開かれ、昭和56年には町民のシンボルとして「町花」に認定されました。
北海道の初夏の花として皆さんの目を和ませ、魅了しているラベンダーは富良野地方はもとより、北海道を代表する花としてこの上富良野町から第二の道を歩み始めたのです。
【注】ご本人及びご親族の許可を得ていないためイニシャルで表記しました。
日の出公園に建てられた発祥の地碑は、「行政区分として同じ」上富良野町内でラベンダー栽培が始まったことを表示しているに過ぎない、ということです。
次回は「観光発祥の地」といわれるファーム富田を取り上げます。
- 2013年10月10日 5本に戻った5本の木
- 2006年10月13日 ラベンダーの冬支度
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